プライベートレッスン-first
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涼兄はいつも、甘い甘いキスをくれる。
確か、初めての時は、そっと触れるだけのキスだった。
それさえも、歯が鳴ってしまいそうなほど緊張した。
だって、甘さも、柔らかさも、そして熱も、全部、全部、初めてだったんだもん。
ずーっと願ってきたことなのに、今もまだ涼兄の甘さにまだ慣れることができなくて
だから、キスされると、いつも何も考えられなくなってしまう。



「んっ・・・涼兄・・・」

「里緒」

「っん・・・・」


頭の中は目の前の涼兄でいっぱいで、何も何も・・・考えられない。
全部、忘れる。息をすることさえ忘れてしまう・・・。
それくらい私の中は涼兄でいっぱいだ。
・・・なのに、なのに涼兄は・・・


「ねえ、里緒」

「ん・・・・」

「なあ・・・・・・息しないと・・・お前、死んじゃうぞ」















「もうっ、あっちいってよ」


まずいってそう思ったが、遅かったらしい。里緒はすごい剣幕で怒ってる。
だけど、その顔さえ可愛いくて、俺の頬は自然に緩むんだよな。
さっきだって・・・一生懸命に息を止める姿が可愛くて仕方なかったんだ。
だから、ついからかうようなこと言っちゃったんだよ。


「いいもん、練習してくるから」


ほっぺたを膨らませて、プイと横を向く里緒の顔は真剣そのものだ。
あいつの性格からいって、冗談ではなく、心底本気の言葉なんだろう。
だけど・・・練習って・・・キスの練習なんて聞いたことないぞ。
悪いとは思っても笑いがとまらない。
こんなとこを里緒に見られたらまた何言われるかわからないから咄嗟に背を向けたけど、
ヤバい、駄目だ、バレそうだ・・・・・肩が震えてるよ俺。


「涼兄、何笑ってんのよッ」


あーやっぱ見られたか。まいったな。


「ん、別に笑ったりなんかしてないさ」


一瞬で笑いを消し、いつもの顔を作ってみたりする・・・俺も、ずいぶん図々しくなったもんだ。


「うそっ。今、笑ってたじゃない。何がおかしいのよ」

「おかしいなんて言ってないだろ・・・いや、まてよ・・・やっぱそれおかしいんじゃないか?」


そうだ、おかしい。やっぱりおかしい。キスの練習なんてどこか違ってる。


「でも、涼兄・・・さっきも笑ったし、私ちゃんと練習してくるもん」


だから、その練習ってのがおかしいのに・・・わからない奴だな。
まあ、その原因を作ったのは俺だから、あまり偉そうにも言えないか。


「なあ、里緒、だいたい練習ってなんだ?それに、誰と練習するつもり?」

「えっ」

「だからさ、里緒はいったい何の練習したいわけ?」

「・・・・」


黙り込んでしまった里緒の両腕を掴む準備をした。
もう一度訊けば里緒は絶対逃げる。賭けてもいい。


「ねえ、里緒?・・・なんのれんしゅう?」


「も、もういいよっ。この話は終わりっ」


ほらね、もう俺から逃げ出そうとしてる。


「やっ、涼兄、離してよ」

「残念だけど、ちゃんと答えるまでは、だーめ」


真っ赤な顔で俺を見つめる里緒。
キスって言うだけなのにそんなに恥ずかしい?
ねえ里緒は恥ずかしいと、そういう顔になるの?
小さな小さな妹が、こんな表情するほど大人になってるなんて夢にも思わなかった。
けど、もう里緒は妹じゃないから、俺も里緒の兄貴なんかじゃないから
だからその顔、もっと見たい。もっともっと赤く染めてもいいでしょう?


「ねえ、里緒・・・」

「なっ、何」


本当に可愛いね。でも、もっと可愛い顔隠してるだろ?


「練習しよっか」

「だ、だからもういいって。いいから離してよ涼兄」


離す?まさか。


「いいから、ほら、こっちおいで」

「あ、でも、でも、私・・・」


里緒の腕を引っ張って、少し強引に膝の上に座らせる。
そのまま、腰に手を回して、引き寄せれば、里緒の脚は自然に開いて
完全に俺の体に絡まるように密着した。


「や・・な、何するの・・・?」

「だから練習だよ」

「練習って・・・あの・・・何の練習?」

「ふっっ・・・ずるいね里緒は。自分は言わなかったくせに俺には訊くんだ」

「そ、そういうわけじゃないけど」


下を向きっぱなしの里緒の顎に手をかけて、そのまま首筋へと指を伸ばすと
閉ざされていた瞳が大きく開いた。
・・・・やっと見たね・・・・ご褒美に髪を撫でてあげるよ。


「キスの練習・・・・俺とはしたくない?」

「そんなことない」


真剣に首を横に振るたびに里緒の髪が揺れる。
俺は里緒の頬に軽く口付けて、微笑んだ。


「いい子だ、じゃあ始めるよ」


里緒がコクリと頷いたのを合図に、二人だけの練習が始まった。







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