シスター・アンジェリーク 3 |
「俺の女になれ・・・」 私はその言葉に頷くことはできなかった・・・・けど否定もできなかったのも事実。 怖いのに、いけないことだと頭ではわかっているのに、彼から目が離せなかった。 無言でいる私の態度をYESと解釈したのか、私の顔を包む彼の指に力が入った。 「しっかし、たまんねぇ顔だな」 彼は私の顔から手をはなし、両手でもって腰を掴んで自分のほうに引き寄せると荒々しい仕草で修道服の裾をたくし上げ、太股をぎゅっとつかんだ。 「あっ!」 思わず声を出してしまった私を、くくっと、唇の端だけで笑う。 「これぐらいで感じてんじゃねーよ」 拘束を感じていた太股が自由になる。 だがまたすぐに、今度は太股の内側を捕らえられ膝頭から脚の付け根に向かって、ゆっくりと撫上げられてゆく。 その手の動きは何度も何度も繰り返されるが、指先が中心に辿り着くその直前に、ふいに指が離れ、また膝へ向かって下りてゆく。 もどかしさに身体の奥の方で小さな炎が燃え上がって、記憶が飛びそうで、そして怖かった。 「や、やめて・・・」 「どうして嘘を付く?本当にやめて欲しいのか?」 彼の手が私の膝で止まり、その指先だけがかすかに膝のうらをなぞる。 「やめて、私はシスターよ。私の身体は主の・・・神のものだわ・・・こんなこといけないのよっ」 「黙れ」 急に膝を高く持ち上げられてバランスが崩れた私の身体を、彼のもう片方の腕が支える。 そのまま彼の身体ごと私は祭壇に押し付けられるように倒れた。 「お前はただの女だ・・・・・・俺の女だと言ったはずだ」 誰かの女になるだなんて、そんなこと考えたこともなかったわ。 ・・・・・本当に?アンジェリーク・・・・・本当に考えたこともなかった? 怖い・・・・・私の中で何かが変わっていくような気がする。 このまま火を付けられたら、きっと私は消せない。 燃え尽きるまで燃えて・・・・・灰になって・・・ 「やだっ、やめて下さい」 「こんな時まで敬語を使うとは立派な心がけだな、シスター」 彼の手が私の背中に回り、ファスナーを探り出してゆく。 ・・・・・ここでやめなければ・・・もう・・・・・・ 「やめてって言ってるでしょっ」 「やめないと言ったら?」 私は思い切り彼を睨み付けて、生涯使うはずのなかった言葉を吐き出した。 「あなたを・・・・・殺すわ・・・・」 彼の手が止まった。 「上等だアンジェリーク、やっぱりお前は本当に女だな」 表情一つ変えずに身体を離すと、私を起き上がらせようと肩に手をかけようとする。しかし私は彼の手が自分の身体に触れないうちに起き上がった。その私の態度に彼は諦めたように息を吐き出して、軽く笑った。 「まあいいさ。時間はたっぷりある・・・・・とりあえず名前くらいは言うのが礼儀ってもんか・・・俺の名はレヴィアスだ。覚えろよな、これからは一つ屋根の下で暮すんだから」 「どういうこと?」 ・・・・・ナニイッテルノ、コノヒト? 「表に書いてある看板は偽りなのかよ?」 アンジェリークはハッとした。 確かに表には看板が立っていて、そこには「お困りの方はどうぞ我が家にお泊りください」と書いてある。 これは亡き父の方針で、この教会では困っている人に手を差し伸べることを第一としていた。 だから宿に困っている人には心安らぐベッドを、お腹の空いている人には暖かいスープを。それらを無償で差し出すのが神に仕える者の使命だと教わって育った。現実に先週までも、2人の旅人が泊まっていた。だけど、今は誰もいない・・・・・・。 「俺は困ってるんだぜ、見捨てないでくれよな、シスター・アンジェリーク」 彼の・・・・レヴィアスの口の端がまた少し上がる。 その瞬間から私は本物の悪魔に魅入られた。 この時、私たちはまだ・・・・・キスさえもしていなかった・・・・・。 |
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