Scene 2






7月29日 月曜日が嫌いになった


夏休みに入って一週間とちょっと。
私はこの素晴らしき夏休みの日々を・・・図書館で過ごしてる。


・・・天真くんは今頃バリバリ働いているんだろうなぁ、
それともリゾート気分満喫とか?だとしたら悔しいんだけど。


『俺は夏休みは住み込みでバイトすることにしたぜ』


なんで?
なんで天真くんは私を避けるんだろう。

避けられてるってわかってて、付きまとう私のこと、やっぱり鬱陶しいとか思ってたのかな。だから住み込みのバイトに行っちゃったのかな。
最近、私・・・・なんだろう・・・よくわかんないよ。
天真くん、好きって言ってくれたよね・・・
私たちって・・・・・・わかんない。

今頃ほんとなら天真くんと一緒に過ごしてたんだろうな。
考えてみれば彼と出会ってから、隣に天真くんのいない夏休みは初めてだ。いっつも一緒だったからなぁ。

家にいるのもつまらないし、かといって、他の友達と出かけるのも、どうも気が乗らない。
何をして過ごそうかと、あれこれ考えたあげく、図書館くらいしか思い浮かばない私は、最近、月曜日が大嫌いになった。


「勝手にすれば」
なんて言わなきゃよかった・・・・かも。


8月8日 前略、海の家にて


海辺のホテルにバイトに来て、もうすぐ三週間。
「やっぱりやめようか」って寸前まで悩んでたけど、実はいまだにここに来たことが正解だったのかよくわかんないでいる。
だけど、一つだけわかったことがある。どうも俺は客商売に向いてるらしい。オーナーにも言われたけど、この短い間で、まあまあ何とか形になってると思う。
けどよ・・・ここってリゾートか?これがビーチハウス?つーか、海の家じゃん?って感じ。

それでも真夏の海はやっぱり最高だ。
青い空に白い雲。どこまでも続く海。
何時間見てたって飽きやしない。
ここに来る前、休憩時間は絶対に泳ぐって決めてたけど、
今はこうして砂浜に寝そべって、ぼんやり海を見てるほうがいい・・・・


『勝手にすれば』


っ!!
なんで、こんな時にあかねの声なんか!!
なんで今さらっ!!今さらどうしようもねえのに。
・・・・それに声だけ聞こえたって、しょーがねえじゃんかよ・・・
声だけなんかじゃ・・・・


そうか・・・会えないってこういうことなんだな・・・


勝手にすれば・・・かぁ。
確かに勝手だよな。勝手に好きんなって、勝手に告って・・・勝手にムカついてる。あいつにしてみれば、わけかんねえって思っても当然のことだ、なにしろ自分ですらよくわかんねえんだから。

好きだって言ったのは、確かに俺のほうからだ。
それを受け入れてくれたから、お前も俺と同じ気持ちっだって思い込んじまったけど、実のところ、あいつの気持ちはどうだったんだろう?俺のこと好きだったのか?
あーっ、もうっ、わかんねーよ!




なあ、あかね・・・俺たちまだ付き合ってるよな・・・・・


8月20日 夕陽のせいではなく


浜辺はこのところ、これまでになく落ち着いた様子を見せている。
シーズンも峠を越したんだろう、ずいぶんと人が少ない。
遊泳禁止の区域も広がってきてるしな。

海で泳げないからか、砂浜で遊ぶ子供がやけに目につく。
そいつらを見てたら・・・あかねを思い出した。それと自分らが子供だったときのことを。


沈んでゆく夕陽を見てたら、柄にも無く切ないような寂しい気持ちになった。

なんで俺は一人で夕陽を見てるんだ?
なんで隣にあいつがいないんだ?

俺が寂しくなったのは、夕陽のせいだとばかり思った。
だけど、俺は仕事を終えて部屋に戻ってからも同じことばかり考え続けた。もちろん、もうとっくに夕陽は沈んでたけど。


俺とあかね・・・
俺たちは仲のいい友達だった、はずだ。
だからって仲のいい恋人になれるとは限らないってことなのか?
だってそうだろ、今の俺たち・・・・


あー!!だめだ・・・ぜんぜん眠れねえし・・・


なんでこんなふうになっちまったんだろう。
会えばすぐに喧嘩して、マジでいっつも泣かせてばっかで。
こんな俺のこと、あいつはどう思ってるんだろう。



好きだと言ってしまったから変わってしまったのか
好きだと言わなければ変わらずにいられたのか・・・

けど・・・

言わずにはいられなかったんだからしょうがねえじゃねーか。
好きだって言わずには。


・・・今の俺おかしいのかな、すげえ寂しい。
前はこんなことなかったのに、こんな気持ちなんて。



寂しい・・・か。



あかねも寂しがってると思うのは、俺の勘違いなんだろうか。


8月21日 心の旅



もう何日会ってない?

別にわざわざ確かめなくてもいいか・・・ちょうど一ヶ月だ。


私は夏休みが始まった頃、やけにカレンダーが気になって仕方なかった。
花火大会やらプールやら・・・夏の素敵なイベントを「これが天真くんと一緒だったらな」なんて・・・そんなふうに、何でもすぐに天真くんに結びつけて考えてたから。
それが嫌で図書館に篭ることにした訳だけど、結局はあんまり意味なかったみたい。



昨夜もあまり眠れなかった。
最近こんな日が続いている。



夢の中の私はいつも天真くんと一緒だ。
多分そこは彼が働いている海だと思う。
裸足で砂浜を歩いて、アチチなんて言って、ただそれだけなんだけど、すごく楽しい。
天真くんは鼻の頭を真っ赤にして、笑ってる。私も笑ってる。


そんな楽しい夢は・・・・見たくないよ。
夢だけが楽しくたって、起きたら寂しいなんて、嫌だよ。



あの日、天真くんから好きだと言われて、付き合おうと言われて、簡単に頷いた。
私も昔からずっと好きだった。
いつから好きだったんだろうか、天真くんを見る度、話をする度に、手とか足とか頭とか・・・もうぜんぶが熱くなって・・・いつの間にか本当に好きな人は彼なんだって自分でわかってた。
だから、いつも、わざと彼の視線の中に入るようにしてたし、いつでも彼の背中を探してた。

気持ちは今も変わっていないのに・・・・

天真くん・・・
あの日、真剣な顔で「好き」だと言ってくれたよね・・・・・

「あかね、俺、お前のこと好きなんだ」
「ずっと好きだったんだ」
「あっっ、今ももちろん好きだ」

それから・・・少し困ったような顔で「お前は・・・・?」って訊かれたっけ。その時、私は恥ずかしくて、ただ頷くだけで・・・本当はすごく嬉しいのに、私もずっと好きだったのに・・・・私は・・・

そうだよ私、一度も好きって言ってない・・・気持ち伝えてない・・・・

私もちゃんと言おう。
この夏が終わったら、
天真くんが帰ってきたら、
ちゃんと好きだって言おう。
自分の気持ちをちゃんと伝えよう・・・例え彼の気持ちがどうであっても・・・・・・
そうしなきゃ、きっと後悔する。


あと少しで夏休みも終わる。
あと少し。天真くんが帰ってくるまで、もう少しだけ我慢。
でも・・・・メールだったら・・・・邪魔にならないよね。



メール送信中・・・Next Scene >>