聖夜の誓い |
12月24日、深夜・・・ 大観覧車を背にしてクリスマスツリーが光る。 海に、夜空に今にも溶け出してしまいそうな その光に包まれた が、眩しかった。 「ここ・・・ずっとお前に見せたいと思ってた」 「私に?」 「ああ、お前に」 違う・・・俺がお前と見たかったんだ。 と一緒に見たかった。 「綺麗、だろ?」 「うん。すごい綺麗・・・・葉月くん・・・連れて来てくれてありがとう」 ありがとう・・・・その言葉と共に、あいつの微笑みが胸の奥に広がっていく。 きっと、一番欲しかったもの。ずっと求めていたもの・・・。 去年のクリスマスに、このツリーを見つけてから、ずっと一緒に見たいと思って だけど、一年も先の約束なんて、忘れてしまいそうで、不安でしかたなくて それでも、結局この一年、ずっとその思いは変わらなかったし、忘れることなんてできなかった。 何て言って誘おう・・・・あいつはどんな顔するだろう・・・それよりも 俺達は一緒にいることができるのか・・・・そう考えると、すごく、怖かった。 でも今夜、お前は、俺の隣にいて、俺が想像していた以上の笑顔をくれた。 の笑顔。 それだけが見たくて無理を言ってここに連れてきた。 寒くて、泣き出してしまいそうなくらいに寒くて、 そんな一人震える時に、温かな両手で頬を包みこまれるような。 見知らぬ街で途方に暮れた時に、ふと差し伸べられる手のような。 の笑顔は、なんだか、そんなことを思い出させる。 ありがとう・・・・そう言わなきゃいけないのは、だから本当は、俺の方。 「ほんとに綺麗だねー。でもちょっと寒いね」 身を乗り出すの髪を突然吹き出した海風が揺らして・・・その横顔を見てたら、胸が、詰まった。 遠くの光を見つめるあいつの瞳が綺麗すぎて、何故か見てはいけないと思った。 俺なんかが、見ちゃいけない。 なのに、俺の目はあいつから離れなくて、見つめる度に、胸を針で突かれるような痛みを感じるのに。 すごく痛くて、辛いのに、それでも、その痛みにすら胸が高鳴る。 (本当に寒いんだな、耳まで真っ赤だ・・・) そう思った瞬間、俺の手はに伸びていた。 止めろって、いけないって自分に言い聞かせようとしたけど・・・・遅かった。 「は、葉月くんっ!?」 後ろから包み込むようにして抱きしめたの体は、柔らかくて 鼻先をくすぐる髪は、昔食べたバニラアイスのような甘い匂いがした。 「・・・・お前・・・」 俺のこと、好きか?・・・・そう心の中で呟いた。 だけど、実際に俺の口から出た言葉は 「お前・・・少し太ったか?」 何言ってるんだ、俺。 「えっ!!!」 あいつは目を白黒させて俺を見て、それから顔中を真っ赤にした。 「いや、なんとなく」 別に太っただなんて思ってもいないけど、そんなことわかるはずもないけど でも、もう・・・こう言うしかないだろ。 「ひどい葉月くん!太ってないよ!だってコート着てるし、今日は寒いからたくさん着てるし・・・・」 唇をとがらせて、少し俺を睨みながらも、 「・・・でも太ったかも・・・・」と、最後はしどろもどろになるが可愛くて、俺は笑った。 「いいよ」 「え?・・・・・」 「別に太っても、いい」 「また〜そんなこと言って」 本当だよ、少しくらい太ったっていい。 だって昔のお前は、もっと丸くて、ほっぺたなんて本当にまん丸で でも、柔らかくて、甘くて・・・・俺の・・・・姫、だったから。 だから−−− ・・・俺は・・・・ の体をきつく抱きしめようとした・・・けど・・・できなかった。 −−−やっぱだめだ。まだ・・・言えない。 を抱きしめる代わりに、きつくきつく、ギュっと瞼を閉じた。 今、この瞬間の、俺とお前の全てを瞳の奥に焼き付けるように・・・・・。 「葉月くん、どうかした?」 その言葉に、そっと目を開ける。 よかった・・・・ちゃんとお前は、そこにいる。 「いや・・・・なんでも・・・・そろそろ帰るか」 「うん」 先に歩き出す俺の後を追うように、 が小走りで駆け寄ってくる。 前を向いたまま、そっと手を差し出すと、小さな手がそれを掴んでくれた。 たったそれだけのことが、とてつもなく嬉しい。 、俺・・・ いつか必ず言うから、自分の言葉でちゃんとお前に言うから。 俺、来年も、再来年もずっと、この景色、お前と見たいから・・・ だから、・・・・ メリークリスマス・・・・・溢れる光に、誓うよ。 |
おわり |
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