帰り道は寂しい。


全ての景色が夕暮れの影の中に揺れている。

そうだ・・・ずっと帰り道は寂しかった・・・・・でも・・・今は・・・・・




いつもの帰り道






「葉月くん・・・一緒に帰らない?」
「・・・・かまわない、けど・・・」

かまわない・・・・そんな言い方するつもりなんてなかったけど
それ以外に言葉が出なかった。
誰かと一緒に帰るなんて・・・もうずいぶん長い間したこと、なかったから。
でも、これだけじゃ・・・あんまりだな。

「・・・・特に予定もないし、暇だし・・・・お前と帰るの、俺、嫌じゃないから・・・・別にかまわない」

何焦ってるんだ、俺・・・
これなら何も言わないほうがましだった・・・・

だけど はにっこりと笑うと、「じゃあ、帰ろう」って俺を見上げた。
俺はただ・・・こいつと一緒に帰るのは何度目だろうかと、そんなこと考えてた。




「それでね、先生がねぇー」

は何か楽しい話をするとき、今にも笑い出しそうな顔をする。
いつだって、話し終わる前に、自分が一番先に笑い出すんだ。

「っ・・・あっはははっっ・・・っ・・・はははっ・・・駄目だ〜笑っちゃう〜」

ほら、まただ。
の頬が真っ赤に染まってる。
必死で笑いをこらえてるんだろうけど・・・・・それは成功したためしがない。

「はぁー苦しかった〜ごめんね、葉月くん」
「いや別に・・・お前、大丈夫か?」
「うん、平気平気。でね、そのとき先生がさー・あれ?聞いてる?」

・・・まだ続ける気か・・・なんかある意味スゴイ奴だよな・・・

「ああ・・・聞いてる・・・・」

「『まったく君は』って言ったんだよ〜おかしでしょう?」

今の話・・・おかしいか?何がそんなにおかしいんだ?
と言うか・・・こいつは一体・・・俺に何を言いたかったんだ?

「なあ・・・・・・・・」
「ん?どうかした?」
「今の話・・・・どこがおもしろいんだ?」

はきょとんとした顔で俺を見つめていた。

「今の話・・・・おもしろくなかった?」

・・・・・だから聞いてるんだ・・・・もしかして、わかってないのか、こいつ?

「ああ、おもしろくないって言うより・・・よくわからなかった」

嘘をついても仕方ないから、本当のことを言った。
だけど、 の答えは、俺を・・・驚かせた・・・・

「でも・・・葉月くんの顔・・・笑ってるよ」

笑ってる?俺が・・・・
嘘だろ?俺が笑ってる?

信じられなった。
けど、それでも確かに、いつも帰り道で感じていたあの悲しいような
たった一人きりのような、そんな嫌な気持ち・・・・忘れてた。

そして、多分・・・・俺はいつもより、ゆっくりと歩いてた。

「笑ってる・・・・か?」
「うん、笑ってる。でもおもしろくなかった?」


-----そんな心配そうな顔するな・・・・俺は多分・・・・


「いや、おもしろかった・・・と思う」


-----俺は多分・・・・きっと・・・


「と、思うって・・・・。んー微妙。まあいいけど・・・へんだなぁ」


俺はきっと・・・この帰り道が楽しかったんだ。
お前と一緒に歩く帰り道が楽しかったから笑ったんだ。

「じゃあ、私あっちだから」

曲がり角で が反対側の道を指差す。

「ああ」
「じゃあ、またね」
「ああ、またな・・・」

は歩き出すと、何度か振り返って俺に笑った。


ああ、またな・・・また、誘えよ・・・
俺はきっと、また、特に予定もなくて、暇で、お前と帰るの、嫌じゃないから・・・
お前の笑い顔見るの・・・・好きだから・・・・・ずっと好きだったから・・・・

俺も笑っていたいから、だから、また・・・





帰り道は寂しい。いつだって寂しかった。


だけど、今は・・・夕暮れの中の景色を、美しいって思えるから。







おわり





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