| 50 TITLES(31〜40) |
| 31.抱擁 (遙か3で、将臣と神子)new |
| 「だっせーな、パンクかよ」 自転車置き場で呆然としていた私の背後で将臣くんの声がした。 懐かしいようなオルゴールの音・・・また夢なんだ。 「ったく仕方ねえな。ほら、乗れよ」 「え?」 「自転車置いて帰るしかねえだろ?」 「うん、だから?」 「だーかーらー、俺の後ろに乗せてってやるって言ってんだろ」 私は未練がましくも、空気がもれて少しシュンっとなっている自分の自転車のタイヤを見た。 「おい、何度見ても無駄だぜ、どうすんだよ、乗るのか?乗らねえのか?」 「大丈夫なんでしょうね?」 「お前がしっかりつかまってればな」 「わかった」 不恰好に自転車の後ろに跨って、将臣くんの腰に腕を回した。小さな頃は別として、将臣くんとこんなに接近するのは初めてだった。自転車はぐんぐん進む。風をきって、人並みを抜けて、学校前の坂を駆け下りてゆく。 将臣くんの背中、こんなに広かったんだ。 それでも、これは夢、なんだよね。 自転車はますますスピードを増して、怖いくらいに坂を駆け下りてゆく。 「将臣くん!」 「んだよ、聞こえねえよ」 私は将臣くんの腰にまわしていた腕に、ギュっと力を込めて自分の体を密着させる。 自転車のスピードは止まらない。ぐんぐん進む。このまま坂を降りきれば国道にぶつかる。 強い向かい風に制服のスカートがはためく。手の平にはうっすらと汗が。 私はおでこを将臣くんの背中に押し付けて、体中でしがみついた。 このまままっすぐ。どうか、止まらないで。私、怖くないから。 だって全部夢だから。楽しい夢なんて目が覚めた時に悲しくなるだけだもん。 だからどうか最悪の結末を。 「将臣くん、私、あなたのことがっ!」 そう叫んだ自分の声だけがはっきりと聞こえ、オルゴールの音は私の耳の中でだけ聴こえていた。 |
|
|